歯科保健事業の歩み
周南市健康増進課 歯科衛生士 中岡美幸恵
旧徳山市の歯科衛生士第一号として、昭和46年4月採用。
昭和45年から徳山歯科医師会のご協力によりスタートしていた、イオン導入法によるフッ素塗布業務を主に活動することになった。当初は、園児、小学生及び中学2年生まで年1回だったが、47年から中学3年生までとなり、年2回で4万人に対して、フッ素塗布を本格的に開始。施設は81箇所あり、1年の半分はフッ素塗布業務であったが、その間、児童生徒、施設の担当者への健康教育を実施し、歯科衛生思想の普及に大いに役立ったと考える。
平成15年度からは、徳山歯科医師会のご尽力により、フッ素塗布からフッ素洗口に移行し、さらに小中学生の罹患率は、県下の学校と比較してもかなり低下している。周南市でみても罹患率低下がみられる。
昭和46年当時、1歳6か月児健康診査は行なわれず、唯一、母子歯科保健事業としては、保健所で行なわれる、月1回の3歳児健康診査で歯科相談やフッ素塗布業務に出務。3歳児の虫歯の状況は、69.2%で一人当たり5.3本(昭和47年度)と現在(平成19年度)の26.8%、0.9本と比べると非常に罹患率が高い時代だった。そのための虫歯予防対策として、保育園児や幼稚園児に歯ブラシとコップを配布し、家庭での歯みがき習慣を一層効果的に推進できるようにした。また各支所、公民館での婚前学級や新婚学級、虫歯予防教室や育児学級、幼児学級などにおける健康教育や歯みがきを通して習慣化を図ることに力を入れた。しかし、市民はまだ、歯科保健になじみがなく、参加者が少ない。市広報や有線放送でのPR、他の行事とセットにしたり人集めには苦労の日々だった。しかし、平成4年度の「母と子のよい歯のコンクール」において旧徳山市代表で出場した母子が中央に推薦され、厚生大臣(当時)から表彰されたことを契機に母子保健事業に拍車がかかり、新たな事業を拡大していった。
1歳6か月児歯科健康診査は昭和52年度から開始、月1回の集団健診方式で歯科健診と母親への衛生教育を行なう場ができた。その結果、3歳児の罹患率は年々減少傾向になった。その反面、1歳6か月児の罹患率は、一定せず3%から6%の間を推移している。妊婦や乳児の母親への歯科保健指導に力を入れ、1歳6か月児歯科健康診査の罹患率低下と受診率アップを図ることが課題であつた。
平成9年度からは、県下で唯一の個別健診方式となり、受診率向上を期待したが、逆に下降気味で最初は平均70%であった。折りしも平成9年度は、母子保健事業が県から市町村へ権限委譲され母子事業が住民のより身近なところで母子を支援していく体制が整備される時期であり、育児相談などでPRに努め、未受診者への電話による勧奨を始め、80~90%に上昇し今日に至っている。
40年代以降、保健所を中心として、虫歯予防を軸に母子歯科保健活動が活発に行なわれてきたが、昭和58年以降は、老人保健法施行にともない、成人と高齢者に対する歯科保健対策が重点的に実施されるようになった。
平成元年には、8020運動が提唱され、以前にも増して、歯の「健康教育」や歯科相談を各支所、公民館などで行い、虫歯予防デーには、歯科医師による歯科健診と相談を中心としたイベントを開催したり、保健センターでの歯科健診など、成人、高齢者対象の行事が増加していった。平成4年度から歯科衛生士による寝たきり者に対する訪問口腔衛生指導が老人保健事業として行なわれることになり、在宅歯科衛生士と訪問活動を開始。平成7年には、老人保健法における総合健診に歯周疾患検診が導入されたことで、集団方式による歯周疾患検診を実施。これも平成20年から個別化になり、40,50,60,70歳の節目検診として、スタートしたところである。
平成12年度よりスタートした「介護保険」も福祉介護課が担当であるが、高齢者の口腔ケアなどサポートしていきたいと考えており、老人会やいきいきサロン、介護予防教室などには、積極的に参加している。
また、同年、国民健康づくり運動として、「健康日本21」が厚生省によりまとめられ、その中で「歯の健康」に関する具体的な目標値が設定された。平成14年には、健康増進法が成立し、「歯の健康」が盛り込まれ、市でも歯科医師を含めた委員を中心に「のびのび はつらつ いきいき周南21」を策定し、健康づくりを積極的に推進している。
特に平成20年度の重点目標は「歯」で歯科医師会のご協力を得て、市民を巻き込んでのイベント「ぶち!元気がいいねフェスタ」も、第4回目を予定している。
昭和46年から今日まで、歯科医師会の先生方に助けていただきながら、母子、成人、高齢者、介護などあらゆる事業に関わってきた。
入庁時は「歯科衛生士とは?」の説明に始まり、「歯の大切さ」を理解していただくのに時間を費やした。その上、歯に関心のある人も少なく、どこへ行っても「保健婦さん」「看護婦さん」と呼ばれ、「ご質問は?」と、言えば歯以外のことを聞かれ、虫歯予防教室を広報に掲載しても当日は、2,3人来てくれれば良いほうで、ゼロの時もあった。
しかし、参加者も徐々に様変わりしてきた。歯に関心があり、納得のいかない時は、何度でも足を運ばれる人が増えた。「子どもの歯みがき」や「おやつの食べ方、フッ素について」など、いろいろの質問がとびかい、電話での相談や健康教育の予約も多くなってきた。「話が聞けて安心した。」「頑張ってみます。」「また、聞いてもいいですか。」などなど。
成人や高齢者の人もテレビの影響なのか、「歯周病は怖い。」とか、「正しい歯みがきを教えて欲しい。」などの質問も多々受けるようになり、歯科相談の件数も増え、老人会などの集まりに健康教育をと、頼まれることが多くなった。合併後は、あちこちの施設や団体から依頼が殺到し、嬉しい悲鳴をあげている。講話の後で、「知らんかったことが聞けた。」「入れ歯だけど、来て良かった。」などと、意見を言って帰られるようになった。今後も8020(ハチマルニイマル)を目指して妊婦さんからお年寄りまで、「歯」をとうして楽しく健康教育ができたらと考えている。
【周南市の概要】
- 周南市人口・世帯数
- 154,106人・67,015世帯(平成21年1月1日現在)
- 年齢割合
- 年少人口(0~14歳) 13.37%
- 生産年齢人口(15~64歳) 62.72%
- 老年人口( 65歳以上) 23.91% (平成19年10月1日現在)
【今後の課題】
2010年までに達成したい目標「のびのび はつらつ いきいき周南21」より
■正しい歯みがきを知っている人の増加
・69%→100%(健康とくやま21より、平成15年3月)
■ 健診で虫歯のない割合を増やす
・1歳6か月児:97.2%→維持または、増やす
・3歳児:66.2%→80%(保健事業の概要より、平成16年)
・小学生:29.7%→50%
・中学生:44.6%→65%(学校保健の統計より、平成17年)
■ 歯の健康に注意している人を増やす
・90.7%→維持または、増加(県民歯科実態調査より、平成12年)