21世紀に入りわが国では後期高齢者(75歳以上)人口の急増に伴い、介護・医療費の増加問題や、QOLについて巷で盛んに論議されるようになってきました。また関連学会でも高齢者の口腔ケアや摂食・嚥下機能の維持回復によるQOLの向上などについて医科歯科、看護、介護などの現場や研究機関などから幅広く報告があり、まことににぎやかで刺激的です。
口腔ケアは歯科関係のテキストによりますと器質的ケア(口腔清潔)と機能的ケア(摂食・嚥下リハビリテーション)に分類できるとありますが、だいぶ前から口腔ケアという言葉は歯科関係者の専売ではなくなっており、一般的には口腔ケアは口腔清潔を指し、機能的口腔ケアは摂食・嚥下リハビリテーションを示すようになっております。
摂食・嚥下リハビリテーションにかかわる職種は多く、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、各種療法士、レントゲン技師、管理栄養士、歯科衛生士、ヘルパー、ソーシャルワーカー、そして患者御家族など多岐にわたっており、これらがチームを作って摂食・嚥下障害や低栄養に対処いたします。
私の存じ上げている療養病床(いわゆる老人病院)にも口腔ケアや摂食・嚥下障害に対応するために小さなNST(栄養供給支援チーム)のようなものができました。構成する職種は看護師2名 作業療法士1名 管理栄養士1名そして歯科医師1名でありますが、全身管理を担いチームリーダーになるべき常勤医師が欠落しており、なんともパワー不足であります。しかし勉強し始めて1年あまりで総看護師長の後押しによって京都国際会議場で摂食・嚥下障害に対する摂食・嚥下リハビリテーションの効果について研究発表をすることができました。ほんとうにたどたどしくささやかな発表ではありましたが、参加スタッフや私にとってとてもよい勉強になりました。
ここでお二人の患者様を紹介しましょう。最初は摂食・嚥下リハビリテーション(以後略してリハビリといいます)にとても難渋した患者様です。この患者様は療養病床に入院されている70歳の男性で、入院当初は経鼻経管栄養でした。御本人の希望で経口栄養にルートの切り替えを行ないましたが、むせがひどく発熱が頻発しておりました。病院からの依頼で摂食・嚥下機能回復のためにとりあえず私が単独で介入いたしましたが、後日担当医師と総看護師長から先ほど述べたスタッフが派遣されてきました。
患者様のアセスメントからリハビリが有効と考え、看護師には体位と口腔ケアと摂食・嚥下訓練それにアイスマッサージ、作業療法士には呼吸運動、四肢や下顎のストレッチングと筋トレのエクササイズメニューを そして管理栄養士には食事介助法と刻み食からとろみ材を用いたムース形態に食物のテクスチャー(食物の物性)を変更するように指示をいたしました。門外漢の歯科医師からそれぞれの専門家にケアの方向転換指示がでたものですから、かなり御機嫌を損ねたようでしたが、それでもなんとか指示に応じていただきました。すると約2週間で全介助ながら、ほとんどむせることなく経口摂取が可能となり、さらに1ヶ月後にはかなり摂食・嚥下機能と心身の活動性が向上されました。そして御家族にも喜ばれスタッフからの信頼も頂戴することができました。しかし一年が経過した今も廃用症候群と意欲低下を完全に克服できず、ゴール目標だった義歯を使用しての軟食を自立摂取には至っておりません。
次は悲しいこと・・。 口腔ケアやリハビリを病院で行なっていると、とても深刻な状況に陥ってしまっている患者様にかかわることがしばしばあります。
この脳血管障害後遺症の患者様は呼びかけに対して僅かですが反応がありました。検査からは脱水と低栄養がうかがわれ、酸素化も不充分で極度の口腔乾燥状態でした。口腔乾燥は誤嚥を引き起こしやすく、しばしば破滅的な転帰をもたらします。当日はたまたま保湿処置の準備をしておりませんでしたので、次週拝見するお約束をいたしましたが、やはり心配でその夜ふたたび病室に伺いました。保湿処置と口腔清掃をしましたが、誤嚥性肺炎を併発され3日後に亡くなられました。もっと早いうちに保湿処置と口腔清掃だけでも徹底しておれば異なった予後を辿られたのではないかと悔やまれます。
口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションは患者様の病気回復に有効であることはすでに定説となっています。口腔を清潔にし(食べられる口作り)、カテーテルから解き放たれて、口から食物を摂取する機能を回復するということは人間らしさの回復を意味します。 現在私は徳山医師会病院のNST検討委員会に徳山歯科医師会から派遣されており、そのほか総合病院と療養病床(いわゆる老人病院)に摂食・嚥下リハビリテーションにも出かけております。その病院や施設でも口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションについて関心がとても高まってきましたし、徳山歯科医師会にも口腔ケアのチームができ活動の準備を整えつつあります。有志の先生方がチームにたくさん参加されることを心よりお待ちしております。
口腔ケアは歯科関係のテキストによりますと器質的ケア(口腔清潔)と機能的ケア(摂食・嚥下リハビリテーション)に分類できるとありますが、だいぶ前から口腔ケアという言葉は歯科関係者の専売ではなくなっており、一般的には口腔ケアは口腔清潔を指し、機能的口腔ケアは摂食・嚥下リハビリテーションを示すようになっております。
摂食・嚥下リハビリテーションにかかわる職種は多く、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、各種療法士、レントゲン技師、管理栄養士、歯科衛生士、ヘルパー、ソーシャルワーカー、そして患者御家族など多岐にわたっており、これらがチームを作って摂食・嚥下障害や低栄養に対処いたします。
私の存じ上げている療養病床(いわゆる老人病院)にも口腔ケアや摂食・嚥下障害に対応するために小さなNST(栄養供給支援チーム)のようなものができました。構成する職種は看護師2名 作業療法士1名 管理栄養士1名そして歯科医師1名でありますが、全身管理を担いチームリーダーになるべき常勤医師が欠落しており、なんともパワー不足であります。しかし勉強し始めて1年あまりで総看護師長の後押しによって京都国際会議場で摂食・嚥下障害に対する摂食・嚥下リハビリテーションの効果について研究発表をすることができました。ほんとうにたどたどしくささやかな発表ではありましたが、参加スタッフや私にとってとてもよい勉強になりました。
ここでお二人の患者様を紹介しましょう。最初は摂食・嚥下リハビリテーション(以後略してリハビリといいます)にとても難渋した患者様です。この患者様は療養病床に入院されている70歳の男性で、入院当初は経鼻経管栄養でした。御本人の希望で経口栄養にルートの切り替えを行ないましたが、むせがひどく発熱が頻発しておりました。病院からの依頼で摂食・嚥下機能回復のためにとりあえず私が単独で介入いたしましたが、後日担当医師と総看護師長から先ほど述べたスタッフが派遣されてきました。
患者様のアセスメントからリハビリが有効と考え、看護師には体位と口腔ケアと摂食・嚥下訓練それにアイスマッサージ、作業療法士には呼吸運動、四肢や下顎のストレッチングと筋トレのエクササイズメニューを そして管理栄養士には食事介助法と刻み食からとろみ材を用いたムース形態に食物のテクスチャー(食物の物性)を変更するように指示をいたしました。門外漢の歯科医師からそれぞれの専門家にケアの方向転換指示がでたものですから、かなり御機嫌を損ねたようでしたが、それでもなんとか指示に応じていただきました。すると約2週間で全介助ながら、ほとんどむせることなく経口摂取が可能となり、さらに1ヶ月後にはかなり摂食・嚥下機能と心身の活動性が向上されました。そして御家族にも喜ばれスタッフからの信頼も頂戴することができました。しかし一年が経過した今も廃用症候群と意欲低下を完全に克服できず、ゴール目標だった義歯を使用しての軟食を自立摂取には至っておりません。
次は悲しいこと・・。 口腔ケアやリハビリを病院で行なっていると、とても深刻な状況に陥ってしまっている患者様にかかわることがしばしばあります。
この脳血管障害後遺症の患者様は呼びかけに対して僅かですが反応がありました。検査からは脱水と低栄養がうかがわれ、酸素化も不充分で極度の口腔乾燥状態でした。口腔乾燥は誤嚥を引き起こしやすく、しばしば破滅的な転帰をもたらします。当日はたまたま保湿処置の準備をしておりませんでしたので、次週拝見するお約束をいたしましたが、やはり心配でその夜ふたたび病室に伺いました。保湿処置と口腔清掃をしましたが、誤嚥性肺炎を併発され3日後に亡くなられました。もっと早いうちに保湿処置と口腔清掃だけでも徹底しておれば異なった予後を辿られたのではないかと悔やまれます。
口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションは患者様の病気回復に有効であることはすでに定説となっています。口腔を清潔にし(食べられる口作り)、カテーテルから解き放たれて、口から食物を摂取する機能を回復するということは人間らしさの回復を意味します。 現在私は徳山医師会病院のNST検討委員会に徳山歯科医師会から派遣されており、そのほか総合病院と療養病床(いわゆる老人病院)に摂食・嚥下リハビリテーションにも出かけております。その病院や施設でも口腔ケアや摂食・嚥下リハビリテーションについて関心がとても高まってきましたし、徳山歯科医師会にも口腔ケアのチームができ活動の準備を整えつつあります。有志の先生方がチームにたくさん参加されることを心よりお待ちしております。